誰にも会わない冬の山梨百名山 2座 甘利山・千頭星山…途中撤退

2021年2月下旬の週末、今年はじめての山歩きに選んだのは、山梨県韮崎市を登山口とする山梨百名山の2座 甘利山・千頭星山。南アルプスの鳳凰山東側の山腹に位置する。
都内自宅を明け方3:30すぎに出発し、中央道で高井戸IC〜韮崎ICとつなぎ、甘利山への冬季閉鎖ゲートまで約2時間。途中、韮崎IC近くにローソンがあり、朝食とトイレ休憩、時間調整をさせてもらう。

山行ログ

山梨県・県道613号線(甘利山公園線)冬季ゲート→椹池/白鳳荘→▲南甘利山→▲甘利山→▲奥甘利山→千頭星山方面(途中撤退)→▲甘利山→甘利神社→冬季ゲート

 

県道冬季ゲート〜椹池/白鳳荘


明るくなりはじめるころに予定通りスタート。右側に登山者ゲートがあった。予報通り、スタート時の気温はこの時期としてはかなりあたたかい-2℃。


冬季閉鎖されている山梨県・県道613号線(甘利山公園線)の舗装路は甘利山山頂近くまで通じていて約10kmある。4月下旬〜11月上旬の通行可能時期は車で山頂直下まで行けてしまうが、この時期は過酷なロード区間とも言える。
途中、富士山がこの日初めて顔を覗かせ、反対側の木々の間からは八ヶ岳の峰々もチラチラと。


山梨県・県道613号線(甘利山公園線)と、県営林道御庵沢小武川(ごあんざわ・こむかわ)線の分岐。
左方向の南アルプス方面は落石により通行禁止(解放未定)。右方向の武川方面も12月上旬〜4月下旬まで冬季閉鎖されている。いずれのルートも、冬の甘利山へはかなりのロード区間を要する。

コロナ禍ということもあり、人がほぼおらず、スノーギア Snow Plak〈スノープラック〉Approachのテストをしたかったからこそ、今回選んだ山域。


ゲートから県道613号線を半分ほど来たところにある公衆トイレは、この時期はCLOSEされている。県道613号線は、山へと続く舗装路にしては全体的に道幅が広くカーブミラーも多く設置されていて、県営林道ではなく県道である証左ともいえる。


公衆トイレのすぐ先にある椹池(さわらいけ、標高1,283m)への入り口。ここからは舗装路を離れやっと「山に来た」という感覚が満ちてくる。


椹池のほとりには白鳳荘が建ち、20張くらいのキャパシティでキャンプ指定地にもなっている。ここでのんびりキャンプも良さそうだ。ちなみにこの白鳳荘の管理人は、深田久弥の最期に山岳救助隊員として関わった方だという。


白鳳荘は冬季閉鎖されているが裏手に利用可能な屋外トイレがある。汲み取り式ながら、よく整備されていて綺麗でフタもあるので臭いも気にならず(誰もいないことがわかっているでの、ドア解放で目の前の椹池を眺めながらだったということもあるが…)。トイレ維持協力金として記載されていた100円を白鳳荘の登山ポストに入れ、先に進む。
椹池は日陰部分になる半分ほどが白く凍結、日向はうす氷が張っていた。

 

椹池/白鳳荘〜南甘利山〜甘利山


白鳳荘と椹池の間からやっと登山道が始まる。ここまでの舗装路歩きで既に5km、標高780mほどあげている。本来であればもっと気温が低い時期のはずだけれど、木々の間から射す日差しが暖かくてたまらない。


一部南側の斜面をトラバースするルートは道幅が狭く、踏み跡も薄い。落ち葉もたっぷりあり、滑らないように慎重に進む。振り返っての1枚。


南甘利山と甘利山への分岐に到着。といっても、南甘利山(直進)へはここからほぼ平坦な100mほどしかないのだけど。ここまで斜面トラバース地点以外は特に危険箇所もなく、ルート明瞭でよく整備されている。


分岐から近いので南甘利山(みなみあまりやま、標高1,652m)のピークも踏んでおく。さらに先へ登山道はついていて、クリンソウの群生地でもある大笹池を経由して甘利山/奥甘利山分岐へと通じるルートもある(一部地図では破線扱い)。


分岐まで一度戻り、甘利山山頂へと進む。途中左手には、南アルプス南部がチラチラと見える。少しずつ登山道にも雪が出てくるが、チェーンスパイクも不要なほどで凍結箇所もほぼ無く気持ちの良い登り。


順調に歩を進め、山梨百名山の1つ 甘利山(あまりやま、標高1,731m)山頂に到着。かなり広い山頂で富士山の眺望バッチリ。富士山方面と、八ヶ岳方面の2つの山頂標識がある。夏には夜景スポットとしても賑わうようだ。甘利山は韮崎市と南アルプス市の市境にもなっている。


この先、千頭星山までは雪が深くなるので、ワカン + スノーシューのハイブリッド的な位置付けがされている新しいスノーギアSnow Plak〈スノープラック〉Approachを持ってきた。今回は、そのお試し山行でもある。


天気が良い週末ということもあり、今日はかなり混んでいるだろう八ヶ岳が見える。
こちらはソロで、もちろん周りにも誰もいない。足元を見る限り、自分以外に先週ヤマレコにレポートがあがっている(バリエーションルート使用、青木鉱泉まで行ってフルマラソン超えの42.5kmを1Day…スゴいな)1人分の踏み跡、あとは鹿と小動物の足跡のみ。


奥秩父山塊の左から瑞牆山〜金峰山〜大弛峠〜国師ヶ岳方面。手前には深田久弥終焉の地、茅ヶ岳。

 

甘利山〜奥甘利山〜千頭星山(途中撤退)


甘利山から奥甘利山へと進むと、北斜面は徐々に雪が増えてくる。写真は振り返っての1枚。標高を上げるとさらに雪は深くなるのだろう。


甘利山と奥甘利山の鞍部。南甘利山から大笹池を経由してくるとここに通じるようだ。少し進んでみたが先にトレースはない。視界がひらけるこの鞍部は、少し遠くに数頭の鹿の群れが見えた。奥が千頭星山方面。


この鞍部でアイゼン PETZL〈ペツル〉レオパード FLを装着し、ここから奥甘利山へは南斜面の登りが少し。ザクザクと効く久しぶりのアイゼンが心地よい。


登りきったところで、奥甘利山(おくあまりやま、標高1,843m)山頂に到着し昼休憩にする。


南斜面で正面にテカテカの富士山北斜面を見ながら、昼食のカップラーメン。風も弱くおだやかであたたかく、ランチ防寒用に持参したAXESQUIN〈アクシーズクイン〉アグラスカートも出番なし。

日帰りで距離を歩く感じだと、 EVERNEW〈エバニュー〉400FDPRIMUS〈プリムス〉ウルトラバーナー P-153のセットでカップラーメンばかりになってしまう。もう少しゆるく、ランチを楽しめる山行も増やしたいけれどなかなか難しい。


奥甘利山山頂からの八ヶ岳。主峰赤岳のあたりは雪煙があがっていてかなり風が強そう。実際に、天狗岳までの稜線が爆風で登頂を諦めたというツイートも下山後にちらほら見かけた。


昼休憩後、さらに山梨百名山の1つ 千頭星山(せんとうぼしやま、標高2,139m)までのルートを進む。雲ひとつない青空に、誰もいない山域、葉が落ちた雪の樹林帯ルート。最高か!

 

Snow Plak Approach装着、そして撤退


奥甘利山から御所山・青木鉱泉分岐への登り途中から雪がかなり深くなってきたので、Snow Plak〈スノープラック〉Approachを初めて装着。アイゼンとのセット装着が必須ということになっているが、アイゼンなしでの装着カスタマイズもできそうだと思っている。
わずかなトレースを参考にしつつ、地図を見ながら徐々に雪深くなっていくルートを進む。


スノーシューのような面積の広さと、ワカンのように軽量かつ短く取り回しがしやすいのが特徴というスノーギア。スノーシューほどではないだろうけれど快適に進める。


装着なしでツボ足だとこんな感じで膝ちょっと下くらい、時々膝上まで踏み抜き。


が、ここで問題が発生。
Snow Plak Approachは前側金属部分をシューズとアイゼンの間で挟み込むようにセットして、ヒール側ストラップで固定するが、今回履いてきたスノーシューズ LA SPORTIVA〈スポルティバ〉ウラガノ GTXは、スノートレイルの快適ウインターランニング向けに開発されたモデルで、ソールがかなり柔らかい。

片道10kmの舗装路歩きがあるため選択したシューズだけれど、ソールの柔らかさが仇となって足を置いた時にソールが沈み込みやすく、前側挟み込み部分がずれてSnow Plak Approachが外れてしまう。
アイゼンを再装着したり、差し込む位置を少し調整をすると歩けるようになるも、御所山・青木鉱泉分岐まであと少しのところ、3回目に外れたところで撤退を決定。

「ウラガノ GTX」と「レオパード FL」の相性は問題なしと確認済み。
「レオパード FL」と「Snow Plak Approach」の相性も、GRiPSブログなどで問題なしと確認済み。
ただし「ウラガノ GTX(ほか、ソール柔らかめのシューズ)」と「Snow Plak Approach」は相性があまり良くないことがわかった。

超軽量スノーハイクになるこの組み合わせは、装着/セッティングの工夫だったり前固定部分の(アイゼンなしでの装着も含めた)カスタマイズでなんとかクリアしたいと思う。そのためにストラップの長さも今回はカットしないで持ってきた。カスタマイズとテストができたら、ブログ記事を書く予定。


夏のコースタイム1時間で、時間的にも体力的にもツボ足で千頭星山までいけないこともないだろうけれど、今回は新しいスノーギアSnow Plak Approachのテスト山行の意味合いが強いので、いろいろ知見的収穫があり十分満足できたので、標高2,000mを目前に撤退。このあとは、トレースがほぼないルートだったので少し残念ではあるけれど…。

ただ、いきなり八ヶ岳とか行かなくて良かった。危険度というより、夜中に3時間運転して、登りはじめ1時間歩かずに撤退という可能性もあったから。


撤退を決めて、同じルートで甘利山まで戻る。
甘利山山頂周辺は、夏に多くの人が気軽に訪れることからかなり綺麗に整備されている。山頂直下の駐車場へは木道もあり、徳島県の剣山にどこか似ている。

 

甘利山〜県道冬季ゲート


甘利山から少し下ったところからは、この日初めて南アルプス 鳳凰山を少しだけ見ることができた。千頭星山に登らないと見ることができないと思っていたので嬉しい誤算。オベリスクも視認できる。


テーブルと椅子があったので、最後の休憩で行動食のチョコをパクつく。やや風がでてきたが、2月とは思えない気温で日差しが暖かい。


手前のお椀型が甘利山、奥が千頭星山。千頭星山から右に伸びる雪原のような稜線をSnow Plak Approachで歩きたかったが、仕方ない。


甘利山からの距離700mほどのところにある甘利山山頂駐車場。夏はここまで車で上がることができ、山頂まで15分もかからなさそう。いくつかトイレが設置されていたが、この時期に開いていたのは第2駐車場にある外トイレだけだった。あるだけでありがたい。


舗装路10km歩き下山のはじまり。暗くなってもヘッドライトがあれば、ここからの下りは道迷いの可能性がないので、日没までにここに戻る設定で千頭星山まで行けばよかったかな?と脳裏をかすめる…が、良かったのだ、これで。また来る理由になる(ということにしておこう)。


舗装路の山梨県・県道613号線(甘利山公園線)を少し下り、富士山、南アルプス市街、椹池と見渡せるスポット。


標高1,500mくらいまでの日陰は、凍結箇所が多く超絶アイスバーン。これは運転したくない。グリップが効く山側の路側帯を注意深く進む。


途中、下山ルートにある甘利神社への登山道があったので立ち寄る。賽銭を入れ、無事下山のお礼(まだ終わってないけど)をし、最後に参門にも一礼。


甘利神社への参道階段を降りると、今朝立ち寄った椹池に出る。やはり半分ほどの日向は溶けていて風に少し揺らいでいる。が、舗装路歩き10kmのうち、まだ半分ある…ぐぬぬ。
スマホバッテリーも余裕だし、この山域には他に誰もいない(山頂の踏み跡から判断)し、熊よけも兼ねて音楽をかけながら、時には歌いながら下山。普段は絶対やらないけど。


だいぶ陽が西に傾いた頃、無事に冬季閉鎖ゲートまで戻ってきてゴール。もちろん自分の車以外には停まっていない。ゲートに表示されている気温は13℃。やはり2月とは思えない暖かさ。陽も長くなったものだ。

下山後は、鳳凰三山の後にも立ち寄った武田乃郷 白山温泉へ久しぶりに訪問。このご時世で休憩所やお食事どころは営業しておらず、パッと汗を流し、帰宅の途についた。

 

【ウェアメモ】

 

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