登山やハイキングに興味をもち、これからはじめようとしている友人・知人がまわりにいるので、自分の登山準備から記録アップまで、どのようなツールを使っているのかをまとめた。
友人と一緒に山に行く時、自作した計画書を見せると、「ここまで作り込むの?」と驚かれたことがあるが、ほとんどの山行がソロ、かつビビリなのでここまで必要あるのか?というツッコミは勘弁願いたい。入山時に恐怖感と緊張感がゼロになったら登山はやめます。
右肩上がりの山岳遭難者数と自己責任
via 平成30年における山岳遭難の概況(令和元年6月13日 / 警察庁)
キャンプ、登山、トレランなど何度目かのアウトドアブームと言われている昨今、山での遭難/行方不明情報が多く報道され、やはり「安全に楽しむ」ことが最低限のミッションであることは間違いない。スマホの普及によりデータ数が実測に近くなったということもあるだろうけれど、警察庁発表の最新資料による山岳遭難は右肩上がりで上昇し続けている。
よく「自己責任」という言葉が聞かれるが、他人がどうこう言うための言葉ではなく、「自分の身は自分で守る」という意味だと解釈している。そのために事前準備で可能な限りの危険予測をして、状況と経験値に基づいて現地で判断するリスクマネージメントが必要だと思っている。
安全に登山を楽しむために必要な、自分が使っているデジタルツール
STEP 1) どの山に登るか
STEP 2) 登山計画書の作成
STEP 3) 登山計画書の提出、家族/知人にシェア
STEP 4) 山行時に地図アプリで現在地とGPSログを取得
STEP 5) 山行記録をまとめる
様々なサービスがありいろいろと使った上で現在も使用しているサービスだけをピックアップした。もちろん他にも同様のサービスはあるし、面倒くさがらずに自分にマッチしたものを見つけて使うのが良いと思う。
今回はデジタルツールだけに絞っているし、「紙地図 vs 地図アプリ」なんて議論も無意味だと思っている。「便利で、より安全になるから使っているデジタルツール」というだけ。
この他に、デジタルツールではないけれど登山時の不安を少しでも減らすために
- ココヘリ(会員制捜索ヘリサービス)
- YAMAP登山ほけん(山岳保険)
にも加入しているけれど、今回は割愛。
STEP 1 : どの山に登るか【ヤマレコ / YAMAP / ヤマケイオンライン / Twitter / ブログ】
まず、どの山に登るのかの情報収集。
自分の取っ掛かりは、個人のブログや(フォローさせてもらっている優秀な)TwitterタイムラインとRSS登録しているブログの情報で、まだ見たことがない景色に惹かれ、どのような山なのか、自分の体力/技術レベルで行けるのか、現地の最新情報はどうかを「ヤマレコ」と「YAMAP」の記録と、ヤマケイオンラインの現地最新情報、各山小屋のWEBサイトで調べることが多い。
STEP 2: 登山計画書の作成【ヤマレコ(ヤマプラ)】
登山計画書は「ヤマレコ(PC)」で作成している。
ヤマレコ内に「ヤマプラ」という「山と高原地図」で登山プランを作成できる無料サービスがあり、スタート/ゴールまで順にクリックするだけでコース設定は終わり。特に使いやすいと思うポイントは以下の3点。
- 北/中央/南アルプス、八ヶ岳など信州の山の難易度表示
- 歩く速度によって、倍率変更できる所要コースタイム
- スタート時間を指定すれば、到着時間予測がしやすい
「ヤマプラ」でコース設定をしたあとは「ヤマレコ」に戻り、その他の必要情報を入力して登山計画書を仕上げる。
登山計画書は、義務的な都道府県警への提出や家族へのシェアだけでなく、当日自分も使用するので可能な限り詳細に記述する。万が一の場合も、詳細であればあるほど有効だと思う。
コース設定の他に、自分が登山計画書に入力している主なもの
- 入/下山口と、車の車種/ナンバー
- エスケープルート
- 危険箇所、必携装備
- 食事と行動食予定
- 日の出/日の入時間
- ルート上のトイレ、水場
- 下山後の温泉
- 下山後のおいしい蕎麦屋(or 名物)
- 個人情報:氏名、住所、血液型、生年月日、自分の携帯番号
- 緊急情報:妻の携帯番号、ココヘリID、YAMAP登山保険の証券番号
- ココヘリ捜索要請専用TEL
万が一の時に妻がビビってしまわないように「※下山予定時間より6時間を経過しても連絡が取れない時は、迷いなくココヘリ捜索窓口にTEL」ともテンプレートとして書いている。
STEP 3: 登山計画書の提出、家族/知人にシェア【コンパス / Dropbox】
登山計画書ができたら、入/下山口のある都道府県警へオンラインで提出する。
登山口によっては登山届を入れるポストが無い場所があるし、過去には見落としたり、入れ忘れたことがあるから、事前にオンラインで済ませている。
自分は、日本全国どこでもオンライン提出可能なサービス「コンパス(PC)」を使用して、以下の手順で提出している。
- 「ヤマレコ」の山行計画個別ページで、プリントアイコンをクリックして登山計画書をPDFファイルで保存する。
- 「ヤマレコ」とは別に、「コンパス」のサイトにアクセスし別途会員登録/ログインして必要情報の入力(計画書と少し情報重複がある)。その際に、1.で作成した登山計画書PDFファイルを添付(「同行者一覧」で添付できる)して送信する。
登山計画書をオンライン提出したあとは、万が一の場合に最速で動いてもらえるよう、家族と知人にも「登山計画書PDF」をシェアする。PDF送付でも良いが、予定変更でアップデートする可能性があること、また自分でもPDFを見るためにオンラインストレージサービス(Dropbox、pCloud、Boxなど)を使ってシェアしている。
- Dropbox内に「登山計画書PDF」ファイルをアップロード
- 「登山計画書PDF」を選択して「共有リンク(PC)」「リンクをコピー(スマホ)」で作成されるURLを家族、知人に連絡する
- 登山時に電波がない状態でも自身が閲覧できるよう、スマホのDropboxアプリで「登山計画書PDF」の「オフラインアクセスを許可」しておく
- 「登山計画書PDF」を1部印刷してジップロックに入れてから、サコッシュなどに入れておく(スマホ起動の手間と、スマホ電源切れ/電池消耗対策)
これで登山計画書の準備は完了。作成した登山計画書PDFのサンプルはこちら
登山計画書の作成から、オンライン提出、家族/友人へのシェアまで、すべてオフィシャルな無料機能で完結しているし、慣れれば15分くらいで完了するので、登山計画書の提出なしで山に登るのはやめましょう!
STEP 4) 山行時に地図アプリで現在地とGPSログを取得【ジオグラフィカ / YAMAP】
登山当日の地図アプリ、現在地とGPSログの取得は、
の2つを同時に起動使用している。
いずれも電波がある状態で、事前に地図データのダウンロードをしておく。
万が一ログが取れていなかった時のバックアップ要素が強いけれど、それぞれ機能的に少し違う部分もあるので自分の中では同時起動で定着している。同時起動でもスマホ(iPhone X)バッテリーは問題がない(機内モード使用で1泊2日、機内モード使用せず1日程度)。モバイルバッテリーはもちろん持っていく。
ジオグラフィカとYAMAP(と、自分は使用しないことを決めたその他のアプリ)を使ってみて、「地図アプリ/GPSログ取得」を目的としたそれぞれの個人的感想としては
ジオグラフィカ
- 機能面で自由度が高い
- 国土地理院地図を使用でき、地図読みなどの練習やスキルアップにも使える
- バリエーションルートならジオグラフィカ一択
- 地図が山域ごとに分かれていないため、事前の地図ダウンロードはYAMAPより不便
- 自由なコースを設定したり、誰かが記録した軌跡をインポートして、それに沿って歩くことができる ※1
YAMAP
- インターフェース、操作まわりなど比較的誰でも扱いやすい
- 山域ごとにダウンロードする地図が分かれているため、地図の事前ダウンロードが容易
- 地図にない山域は、登山道や関連情報の表示が出来ない
- 誰かが記録した軌跡のインポートは有料会員限定機能 ※1
- みまもり機能が心強い
といったところ。
※1 今月(2019年12月)から、YAMAPの一部機能が有料会員向けとなったため、誰でも使用できる点においてジオグラフィカのメリットとした(YAMAPの有料化(機能制限)の雑感は後述)。
STEP 5) 山行記録をまとめる【ヤマレコ / YAMAP / 自身のブログ】
登山記録を残すサービスとしては、やはり「データ量が多い=参考になる情報が多い」ということ。
自分は登山時に取得したGPSログ(GPX)を使用して、2強状態の「ヤマレコ」と「YAMAP」にログデータ(軌跡情報)と写真をアップロードしている。
「ヤマレコ」は、ジオグラフィカで取得したGPSログ(GPX)ファイルをDropboxにエクスポート(書き出し)、ヤマレコのサイトでそのGPXファイルを読み込んでいる。メールで送ることも可能。
「YAMAP」は、YAMAPアプリで登山記録を終了すると、自動的に山行記録ページに非公開状態でアップロードされる。これはログ取得と、記録の両方の機能を有するアプリのメリット。
ちなみに、「YAMAP取得GPX」の「ヤマレコ」へのアップロード、「ジオグラフィカ取得GPX」の「YAMAP」へのアップロードもデータ破損や不具合などが無い。
写真はいずれも手動でアップロードが必要。ただ、写真に付与されたEXIFの時間情報で、登山記録の適切な位置に自動的に紐付けられアップロードされ便利。
「ヤマレコ」と「YAMAP」へは登山道や水場の状況など誰かの役に立ちそうな情報を主にアップし、どうしても似たような情報にはなるが、よりプライベート感がある記録、より雰囲気が伝わるような内容をこのブログにもアップしている。ルートや標高などのグラフィカルな情報として、ヤマレコ記録のブログ貼り付けツールを使用している。
自分の記録を参考にして、「今週末同じルートで行ってきます。参考になりました。」というメッセージを面識のない方からもらったことがあり、とても嬉しかった。
終わりに
ここまで、登山を「安全に楽しむ」ことを目的として、計画から記録までのプロセスを書いたけれど、これが必ずしもベストと思っていないし、更に便利なツール/機能があればどんどん活用していきたいと思っている。もちろん、機能強化もされるだろうし。
今はすべて無料サービスで完結しているけれど、さらに安全に寄与する機能や魅力的なサービスがあれば有料でも喜んで課金する。
「こちらのツールのほうが便利だよ!」とか「計画〜記録までこのツールを使っている」など、他の人がどのように登山を楽しんでいるのかも知りたいので、Twitterやブログなどで、ぜひ教えてほしい。
これらのツールを使ったから、登山計画をしっかり立てたからといって、遭難や事故のリスクがゼロになるわけではなく、体力、技術、経験、装備など、より安全に楽しむために必要なものはたくさんある。先日の南八ヶ岳でのヒヤリハットの件で、特にそれを実感した。
何事も用途に応じて、アナログで発生しうるヒューマンエラーをカバーする、リスクを少しでも減らすためのひとつとして、デジタルツールを活用していきたいと思う。
2019年12月から実施されたYAMAPの有料化(機能制限)の雑感
今月(2019年12月)から、YAMAPの一部機能が有料会員向けとなり、詳細はYAMAPで発表されている通り。想うところを箇条書きしたいと思う。批判ではないです、縛らみがなにもない、1ユーザーとしての意見です。
- 「国内シェアNo.1の登山GPSアプリ」と謳うYAMAPが「プラットフォーマーは強いのだ!」でニーズにマッチするユーザーからマネタイズするのは必然的で、サービス継続のための有料化は大いに理解できる。自分は月1回程度のテント泊登山だけど、回数が多い人や、恩恵を受けられる、利便性が向上するという人は課金するのがベストであると思う。
- ただ希望をいえば、今まで使えていた「無料機能を制限するのではなく」、新しいテクノロジーでどんどん安全で楽しい登山を推進してもらいたいと願う。
- それを1つあげるとすれば、「無料ユーザーの写真アップロード数が、1記録あたり(日帰りでも、宿泊を伴う複数日でも)50枚制限」になったこと。多くの現地最新データが集まることによって安全が促進されると思うので、機会があれば、そこをYAMAPさんにはお聞きしてみたい。
- 「テクノロジーで山の体験をアップデートする」と掲げて、ビッグデータによるビジュアライゼーションなど今後の展開が楽しみな物も多いので、より安全に結びつくものや、登山業界や観光資源としての山を盛り上げるようなサービスをとても期待している。
オマケ:
YAMAPに肩入れするわけでもなんでもないが、YAMAPに対して「シェアNo.1を自称するならAPIとSDKを公開して」「やることがみみっちぃ」「登山者のことを考えるなら、オープンなプラットフォームにすべき」(すべて原文ママ)とか、他のサービス開発者が言うのはどうなのかと思う。カッコワルイ。
おわり。