199gのDJI Mavic Mini購入と、ドローン規制、登山・キャンプでの利用について考察

ドローンのNo.1メーカーであるDJIから日本仕様199gの新個体Mavic Miniが発表され、購入に至った。航空法や許諾申請の観点から、日本では200gというラインが完全にキモ(欧米では250g)で、DJIからのリリースを待っていたドローンユーザーの知人も多かったが、自分もその一人である。

以前仕事でドローン空撮を含む案件があり、その時は知人のドローンパイロットを召喚(関係省庁などへの許可申請含む)していたので、これまで自身が空撮することは無かった。ただDJIから199gのMavic miniが出て購入することで、テストフライトや事前ディレクションにも、より深い知識で接することができるのではないかと自身でもワクワクしている。

購入機 DJI Mavic Mini


Photo via DJI

Mavic Miniの細かい仕様は他にまかせるとして、4K撮影は出来ないものの、ジンバル付きでサンプル映像を見る限り実用性は十分と感じるし、やはり199gというのが大きい。
paypayモールのキャンペーン中で、大幅なポイントバックでDJI Mavic Mini Fly More Comboセットを購入。バッテリー容量を減らして日本発売しているので、予備バッテリー、プロペラガードなども含めたFly More Comboセットがやはり鉄板。発売が待ち遠しい。

購入したドローンが届く前に、ドローンの種類、航空法、その他の法令/条例などについて、これまで自分がメモしていたことなどをまとめて書いておく(2019年11月5日現在)。
毛嫌いされることが多いドローンについて、利用者以外にも少しでも正しい理解が進めば良いなと思う。

 

ドローンの種類

機体本体の重量とバッテリーの重量の合計が200g以上のもの=「無人航空機」
機体本体の重量とバッテリーの重量の合計が200g未満のもの=「模型航空機」
両方を含めた括りとして「小型無人機」が用いられる。

※参考文献:
小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第8回)(首相官邸)
資料1-2: 小型無人機・無人航空機と航空機の分類について(首相官邸)

 

「無人航空機(200g以上)」「模型航空機(200g未満)」航空法適用の差異

200g以上のドローンは、
「無人航空機」として扱われ『航空法の一部を改正する法律(平成27年法律第67号)及び航空法及び運輸安全委員会設置法の一部を改正する法律(令和元年法律第38号)』により、平成27年12月10日から「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール(国土交通省)」が新たに導入された。

200g未満のドローンは、
「模型航空機」として扱われ、「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」は適用されない。空港周辺や一定の高度以上の飛行について国土交通大臣の許可等を必要とする規定(航空法 第99条の2)のみが適用される。

参考文献
飛行ルールの対象となる機体(国土交通省)
無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン(国土交通省)
航空法 第99条の2

200g規制に含まないもの
プロペラガード、SDカードなど、飛行に必ずしも必要でないバッテリー以外の取り外しが可能なものは対象にならない(国土交通省へ問い合わせ確認済)

 

小型無人機(200g未満含む)の航空法以外の規制

航空法以外については、200g以上/未満の区別がなく、全ドローンが規制の対象になる。

「国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」による規制
平成二十八年法律第九号(電子政府 e-Gov)
小型無人機等飛行禁止法について(警察庁)
小型無人機等飛行禁止法について(警視庁)
国の重要な施設、外国公館等及び原子力事業所の周辺地域、防衛関係施設、競技大会に係る大会関係施設及び関係者の輸送に際して使用される空港などの規制。

土地所有権による規制
民法207条「土地所有権の範囲」
「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」と定められていて、権利者の許可が必要。
数値は細かく定められていないが、過去の判例から上空300m、地下40mが所有権範囲と言われていて、ドローン飛行空域(150mまで)が含まれるため、自身の所有地以外では土地所有者の事前承諾が必要。

 

特定の場所での小型無人機(200g未満含む)の規制・注意事項

上記までは、どこでドローンを飛ばす場合でも必ず守らなければならない法律・規則。
以下は、特定の場所で飛ばす場合に追加される規制の代表的なもの。
これらも200g以上/未満の区別がなく、全ドローンが規制の対象になる。

都道府県/市区町村の条例による公園の規制
無人航空機の飛行を制限する条例等(国土交通省)
例)
・東京都(都立公園条例の「管理に支障がある行為をすること」に該当。許可制ではなく、一切の禁止)
・千葉県(ドローンの使用は、千葉県立都市公園条例の「行為の禁止」に該当する)
・横浜市(横浜市公園条例(公園の設置 及び管理のため)条例第5条第10号に該当するものとして原則禁止)

国立公園/国定公園内の規制
国立公園内におけるドローンの使用について(環境省/信越自然環境事務所)
例えば、アルプスなど大きな山域だと国立公園に該当し、高尾山などは国定公園に該当する。
希少な野生生物の生息・生育する区域と、プライベート空間や利用者が集中する場所での規制。
ただし、「無人航空機」と記載され、200g未満「模型航空機」や全ドローンの括りである「小型無人機」の飛行については記載はなく曖昧。
利用時には管轄する環境省管理事務所への事前問い合わせ必要、場合により承諾取得が必要。

河川敷/海岸の規制
河川法/海岸法と、河川/海岸管理者(国土交通省 河川事務所/水管理・国土保全局)、地方自治体による規制の対象に該当する。
例) 京浜河川事務所

公道の規制
道路交通法76条、77条
道路上での離発着は、「道路を占拠する行為」(道路交通法76条)に該当の可能性が高い。
公道上空の飛行はグレー。弁護士著書「ドローン・ビジネスと法規制」によると「道路の上空での、ドローンなどの飛行は原則として道路使用許可が不要」とのこと。
ただし、高速道路や幹線道路、一般交通に著しい影響を及ぼすような使用は「道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがある」(道路交通法77条)に該当の可能性が高い。
基本的には、管轄する警察署への確認、事前承諾が必要。

参考事例
・国交省の許認可を取得していれば公道上のドローン通過に警察署の許可は必要がないという事例あり
・ドローンが飛んでいるだけで通報される事があり、道路使用許可が必要なくても、管轄の警察署に連絡を入れておくとトラブル未然防止のために良い

 

200g未満のドローン「模型航空機」はどこで飛ばせるのか

規制内容をまとめると、200g未満のドローンを許可を得ないで飛ばせる場所が見えてくる。

許可を得ないで飛ばす必須条件

  • 航空機の飛行に影響を及ぼさないエリア
  • 国の重要な施設、外国公館、原子力事業所の周辺地域、防衛関係施設、競技大会施設を除いたエリア
  • 自身の所有地、または土地所有者の飛行許可を得ている私有地

※200g未満のため、人口密集地規制は除外されるがマナーは必要

これら全クリア以外は、200g以上のドローンと同様に許可取得が必要。
飛行禁止エリア、飛行禁止行為、守るべきルールとして、発売元のDJIからも資料が公開されている(ただし、土地所有権の記載は含まれていない)
安全にフライトを楽しむために(DJI)

 

ドローンによる物資空輸、赤外線捜索

最近話題になっていた台風被害時の物資空輸ドローンや、道志村での行方不明者 赤外線捜索のメモ。
このような人道的支援でドローンを飛ばすにも、飛行技術と訓練が必要であることはあまり知られていない。

 

DJI Mavic Miniの山・キャンプ場でのドローン撮影について


これまでの登山で、特にアルプスではドローンの飛行率が高いように感じているけれど、許諾申請がされていたものかどうかは実際わからない。
今回購入した199gのDJI Mavic Miniは航空法「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」は適用外ではあるけれど、自分が山で利用する場合には

  • アルプスなど国立公園、国定公園であれば環境省管理事務所へ、その他の場合は土地を所有する自治体や所有者へ事前の承諾取得(国立公園に関する規制、土地所有権)
  • テント場などでの撮影は事前に管理する山小屋へ承諾取得(土地所有権)
  • プライベート空間や利用者が集中する場所では飛ばさない(国立公園に関する規制、マナー)
  • 許可があることを可能な限り事前に山小屋/周囲に通知し、クレームや説明を求められた場合は、上記規制内容と許諾があることを「書面で」丁寧に説明しフォローする

ということが、200g以上のドローンと同様に必要だと思っている。

山ではなくキャンプ場での利用であれば、飛行禁止エリアはもちろん把握したうえで、あらかじめ申請すればすんなりOKが貰えそうな気がする。ただ周りへの配慮とマナーはここでも必須。
逆にドローンOKがでるキャンプ場だから利用頻度が上がる、ということもあるかもしれない。

 

ドローンユーザーの節度が試されている

法令や条例などを見ると、まだまだ法整備が完全ではない事がわかるドローン。
少し前に北アルプスの山小屋がTwitterで「国立公園はドローン禁止です」という誤った情報を流し多くのツッコミが入っていたし、「ドローンが飛んでいったら、石を投げて落とすことにしよう。」とツイートしているアウトドアライター(?)もいたし、法制度も理解されていない。

ただ先日の台風被災地での物資輸送ドローンが救世主のように大きく報じられることをみると、地道な活動と研究で信頼を得ていく過程なのだと思う。
そのためにも、シェア率が高いメーカーから200g未満の機体が発売され購入しやすくなった今こそ、ドローン利用者の法令遵守と、他者への配慮とマナーを伴った行動が試されているのだと思う。

あとは、200g規制があったうえでDJIが199gギリギリの個体を開発/発売にこぎつけたわけで、199gがリリースされたからといって、規制重量の引き下げや、全ドローンが航空法対象などと規制強化する流れにならないことを本当に望む。

ドローンを飛ばすにあたり規制が多いことを逆手に取り、海岸や山など自然豊かな場所の土地所有者が、ドローン飛ばせることを売りにして集客を増やすということが大いにありえると思うのだけど、現状ではまだほとんどそういう場所が見つからないのが残念でもある。

 

※注記:各省庁、法令などチェックしていますが、内容に誤りがある場合は指摘いただけると嬉しく思います。
また関東圏の土地所有者でドローンを飛ばしても良いと考えている方がいらっしゃったらご一報ください。撮影映像くらいでしたらお礼としてご提供可能です。

 

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