晩秋 南八ヶ岳 編笠山・西岳 青年小屋テント泊 Day 2

晩秋 南八ヶ岳の青年小屋にテント泊して、2日目。
方向感覚・ルートを失い、暗闇の樹林帯をさまようことになる。

この日は、見晴らしが良いと噂の西岳を経由する周回ルートで車を停めている「富士見高原ゴルフコース」へ下山という計画。
晩秋 南八ヶ岳 編笠山・西岳 青年小屋テント泊 Day 1】からの続きです。

4時過ぎに起床。気温は-5.5℃。
シュラフの中の寒さは問題なく、テントも少し風に揺れる程度だったが、上空の風がうるさく何度か目が覚めた。まわりの4パーティは、まだ誰も起きていない。
この時期の日の出は6時半頃で、まだ2時間ほどは暗いはずだ。

方向感覚・ルートを失い、暗闇の樹林帯をさまよう

テントの中で起き上がり星空を眺めていると便意を催してきた。
青年小屋は冬季休業で外バイオトイレもクローズしている。まだ辺りは真っ暗だが用を足すため、ヘッドライトを点け携帯トイレセットを持ちテント場裏の樹林帯奥に入った。

30-50mほど入っただろうか、用を足しテント場に戻ろうとした時、方向感覚を完全に失った
ポケットの中に手を入れケータイを探すも、寝る時に電池消耗を避けるためシュラフの中にいれ、そのまま置いてきてしまった。GPSが使えない。常時身につけているはずのコンパスや財布・行動食などが入ったストレッチサコッシュも寝る時に外してしまっていた。

樹林帯は傾斜がなくすぐに危険は無いが、それが方向感覚を失わせる原因にもなった。
これまで携帯トイレセット使用で木の影に入る時は、明るいタイミングか、緩やかな傾斜があり戻る方向がわかる場所ばかりだった。

気温は-5℃、夜明けまでまだ2時間近くある。
今日持ってきた腕時計にGPS、方位計は無い。
あたりを見渡しても地面に雪の積もった樹林帯の中は同じ景色が永遠に続くかのようで、テント灯りも見えない。
「ヤバい」「ヤバい」…
という言葉が幾度となく、知らずうちに口から漏れていた。

5分ほど真っ暗闇の樹林帯の中を彷徨いながらも徐々に冷静さを取り戻し、その場に立ち止まりヘッドライトの灯りを消してみる。空を見上げると樹林帯の木々の間から月・星がわずかに見える。上空は依然として風が強く吹いている。

神経を研ぎ澄まし、360度のおおよその方位を判断し、ヘッドライトを再度点けてゆっくりと歩き出す。風向きと月明かりの方向を頼りに、正反対ではないと思える方向に。

辺りを観察しながらゆっくり歩いていると、テント場に通じる細い登山道(青年小屋〜西岳の登山道)がわずかに見えた。
「助かった!」
登山道の進行方向が真逆でも50mほどで着かなければ逆方向に進めば良い。冷静さを取り戻していた。
細い登山道を滑らないよう気をつけながら進むと、急に目の前がひらけテント場に帰還することが出来た。樹林帯へ入っていった場所からは、少し離れていた。

今回の反省点は、GPS機能があるケータイをテントに置いてきてしまったこと。
すぐ裏手であるとはいえ、何があるかわからない暗闇の中で犯してはいけないミスだった。
もう一つあげるとすれば、樹林帯の中に入る時に後ろを振り返り、自分のテント灯りが見える範囲内の行動をしなかったこと。明るいうちにトイレポイントを樹林帯の中で調べていたこともあり、問題なく戻れるとスタスタと進み行ってしまった。

明るければなんでもないようなことが、暗くなっただけで、たとえヘッドライトがあったとしても一気に危険度が増す。今後同じミスをしないよう肝に銘じたい。
「樹海に入ると出てこられない」ってこういうことなのかな、と思った。

青年小屋〜西岳


テントに戻り朝食を食べながら夜明けを待つ。
6時をまわり、空が明るくなってきたところで富士山を見に小屋の方へ移動。


オレンジ色に染まった /^o^\フッジッサーン
最高かよ!

小屋の前で富士山を眺めていると、男性ソロの方がヘッドライトを付けて編笠山から降りてくる。
挨拶を交わし話を聞くと、ONE DAYで長く歩くのが好きで、終電で小淵沢駅まで移動してきて、駅からここまでずっと歩いてきたそうだ!しかも権現岳を経由して赤岳までの予定だとか。ただ心が折れそうとのこと。わかる!
手が寒そうだったので就寝時に使って用済みになったカイロをひとつ手渡し、富士山を眺めながら少し話をさせていただく。編笠山の山頂は爆風だったようだ。


話し込んでしまったので、テント場に戻ると他のソロお二方はすでに撤収完了間近。
自分も片付けをはじめる。


前日、テント設営中にお話した方の話だと、西岳までは雪があり凍結してるとのことでチェーンスパイク CAMP〈カンプ〉アイスマスターを装着。
シューズはLA SPORTIVA〈スポルティバ〉ウラガノ GTX、ゲイター付きで山では最近こればかりだ。
小屋の裏辺りには、狐?たぬき?だと思われる獣の足跡があった。


今回は水/食料込み13kg、初投入のザックEXPED〈エクスペド〉Lightning 60が快適すぎた。
腰荷重、背中が蒸れない、なにより下山時振動をT型フレームのサスペンションがめっちゃ吸収して足を置いたあと、ザック重量が直接足に乗っかってこないような感覚でラク。容量的にはLightning 45でも良かったかもしれないけれど、装備が増える寒い時期用と考えれば60Lで正解か?


青年小屋をあとにして水場〜西岳方面に向かう。北側の樹林帯ということもあり、1週間ほど前に降ったらしい雪が結構残っていて凍結しているところもある。


青年小屋から5分程で水場に到着。
まだ使える。積雪が多くなると、おそらく埋もれると思う。


アップダウンはあまりないが、足元がガリガリに凍っているルートで西岳(にしだけ、標高2,398m)に到着。
森林限界は超えていないが、周囲の見晴らしがとても良い。


権現岳〜編笠山方面。鞍部にはテント泊した青年小屋も見える。


南アルプスも今日はよく見える。


中央アルプスにも雪。


まだ早い時間で空気が澄んでいるからか、御嶽山も見えた!


木々の間から北アルプス


富士山〜南アルプス
いやいや、想定以上に丸見えじゃないか!ここは!


ギボシとその奥に権現岳


八ヶ岳の主峰 赤岳もチラチラと。難ルートらしい凸凹も迫力ある。

西岳〜富士見高原ゴルフコース


西岳から降りる時に、少しルートロスト。
リボンが付いているところ(中央左)から降りてくるはずが、右側の林の中から降りてきた。
GPSを確認しながらトラバースして正規登山道に戻れたけど、そちらにも確実に踏み跡があったんだよな、この地点まで。


西岳〜富士見高原の樹林帯ルートは、富士見高原〜編笠山ルートより少し勾配がきついのと、小さな石が多く下山で使うとスリップしそうであまりペースはあげられない。
西岳からの下山ルートに雪は皆無。



登山口にかなり近いところまで降りてきて、不動清水の長命水。ここを利用することはあまりないかな…。周辺図はとてもわかりやすい。
すれ違ったのはソロ×2、全3パーティのみ。富士見高原ゴルフコース発着の2コースはいずれも静かに歩けるのだな。


紅葉は登山口エリアでわずかに残っている程度。


降りてくると、この日はポカポカな陽気だった。明け方-5.5℃のテント内にいたとは思えない。


登山ポストを見ると、戻ってきたな、とホッとする。


登山口に降りてくると、この日はマウンテンバイクレースの大会が開かれていた。
ゼッケンを付けた参加者とすれ違ったが、ほとんどの人が気持ちの良い挨拶をしてくれた。同じフィールドで楽しむ者同士のコミュニケーションなのだな。


前日には暗くて気が付かなかったが、駐車場周辺はいい具合に赤黄色に染まっていた。



駐車場に戻ってくると、マウンテンバイクレースに参加しているのか車もたくさん!
ダウンヒルのタイムトライアルかな?


身支度を整え、小淵沢ICまでのルート上にある車で5分ほどの道の駅こぶちさわへ。人出もそこそこある。


奥手に温泉 スパティオ小淵沢 延命の湯(10:00~23:00 / 830円)がある。
昼ということもあり温泉利用者は少なく、ゆっくり露天風呂につかる。あぁ極楽!


温泉の横にあるお食事処で、手打ちの延命そば(大盛り)+天ぷらセットをオーダー。
道の駅にある蕎麦屋の中では、かなりレベルが高いと感じる蕎麦と天ぷらだった。

13:30に道の駅こぶちさわをあとにし、渋滞がはじまったばかりの中央道で自宅へ戻る。
小淵沢IC〜永福IC〜自宅までちょうど3時間の行程で帰宅。
やはり渋滞ポイントの小仏峠を15:00前に通過するべし!という教訓はここでも活かされた。

 

快適な登山口へのアクセス、山頂・テント場からの絶景、温泉・蕎麦と満足のいく山行だったけれど、やはり今回は「まさかテント場で!トイレで!」というヒヤリ・ハットは自分の中でとても大きな経験、勉強になった。たかが50mでも、真っ暗闇の樹林帯だとかんたんに方向感覚を失う
今回の山行から戻り、「そういえば登山家の谷口けいさん(女性初のピオレドール賞の受賞者)が亡くなられたのもトイレがひとつの要因だったな」と思い出し、身震いがした。

今思えば、このような小さなヒヤリ・ハットは大きな事故を起こさないため、未然に危険を察知するためにはある程度必要な経験かもしれない。基本的にはノーサンキューだけど。
失敗事例はあまり公にしたくないという気持ちがやはりあるけれど、美しい写真、楽しい内容が公開されがちなブログに書くことで、自分自身でPDCAサイクル:Plan (計画) →Do (実行) → Check (評価) → Action (改善)が少しでもできればと思うし、今後の自分の教訓とすること、誰かの参考になればと思いブログに書くことにした。

 

南八ヶ岳 編笠山・西岳 青年小屋テント泊:ハイクログ

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